「目標を立てましょう」
「未来を描きましょう」
これらの言葉を聞くと、なぜかソワソワしたり、気持ちが重くなってしまうこと、ありませんか?
やりたいことがあるわけでもない。何を大切にしたいかも、はっきりとはわからない。でも何かやらなきゃ、達成しなきゃ。”正解”を探して、誰かの答えをなぞろうとすればするほど、自分の輪郭がぼやけてしまうような感覚。
そんなふうに、「理想の未来を描くこと」そのものに、戸惑いを感じている人が、とても多いように感じています。見えない恐怖やプレッシャーを感じて、「将来のことなんてわからない」と目を逸らしていませんか?
6月のスコレでは、プレッシャーや恐れにつながってしまっている「未来」との関係をやさしくほどいていき、私たちのこれからとの「本当のつながり方」を学び直す講義を行いました。
2025年4月からスタートした「暮らしのスコレ」3期の内容を月ごとに振り返る、「回想録」の連載。今回は、「美しい未来」に触れた6月の記録をお届けします。
6月のスコレ「まだ見ぬ美しい未来を描いて生きる」
暮らしのスコレでは「思考・身体・心」の3つの側面から自分自身や暮らしを整えていきます。心理学や哲学を中心に「思考」を学ぶ講義、「身体感覚」を養う瞑想、「心」とじっくり向き合う個別セッション——スコレで見つけた知識や気づきを、少しずつ自分のものにしていく。この循環が「暮らしのスコレ」が大切にしている在り方です。
6月の講義では、「まだ見ぬ美しい未来を描いて生きる」というテーマを取り上げました。メインとなったのは、「時間は未来から現在に向かって流れている」という視点です。
私たちは無意識のうちに、自分なりの未来をイメージし、それを叶えるために“今ここ”の行動を選んでいます(たとえそれが望んでいないものだったとしても、です)。
なんだかスピリチュアル的にも聞こえる考え方ですが、ちゃんと人間の性質から説明できるもの。日常の例や事例を通してお伝えしていくと、「そういうことだったのか!」「初めて腑に落ちた」という感想が多く寄せられました。
私たちが無意識に描く「未来」がいまをつくっている——だからこそ、「本当に自分が望む状態」をイメージし、できれば身体で“体験”することが必要です。向かう先が実感をともなってわかるほど、いまの選択や行動、心のあり方が少しずつ変わっていく。自分の理想の生き方に向かって、“いま”をより深く、有意義に生きられるようになるのです。
ビジョンを描くことは、「目標設定」や「義務」ではありません。「どんな世界を生きたいのか」「どんな自分で在りたいのか」——その願いに気づき、これまで無意識に選んできた未来を、意識的に選び直すための行為です。
講義の後半では、“あたま”で考えるのではなく、“こころ”で未来を感じ取る、「暮らしのスコレ」オリジナルのイメージワークを行いました。
誰かが決めた正しさや制約を超えて、自分の奥深くから立ち上がってくる“本当に望んでいる”いつかの景色。多様な人々が手を取り合ったり、自然ゆたかな世界が描かれていくビジョンの数々に、「私たちは、なんて自由で、美しい世界観を持っているんだろう……!」と驚きと感動を分かち合う、かけがえのない体験となりました。
スコレのみなさんの声
「暮らしのスコレ」の大きな特徴のひとつに「シェアタイム」があります。講義や瞑想のなかでも自分の感情を言葉にし、日々の変化もSlack上で振り返ってシェアしていきます。
じっくりと時間をかけながら、ともに学ぶメンバーの言葉に耳を傾け、自身のことも考えていくシェアタイムは、「ひとりじゃない」と思わせてくれる時間。ここでは、そのような振り返りの中から数名の声をご紹介します。
Nさん/スコレだから描けた、境界なき愛の世界
“人生に本気にならないとつまらない” 。今回の講義でギューンと、ストレートに突き刺さった言葉です。
「べき・ねば」思考を手放して軽やかに生きるためにスコレに入ったのに、ここ最近は特に“すべき”に押し潰されそうになっている自分や、相手に押し付けている自分がいました。講義のなかで、「やりたいこと」と「やるべきこと」の関係図を見せてもらい、やるべきことを自分にさせてあげられている幸せも感じながら目標に向かって進んでいこうと思えました。
イメージワークで描いた「自分が目指したい未来」は、 絵本や映画に出てきそうな私には似つかわしくないメルヘンな世界でした(笑)。花も草も動物も、空も星も太陽も月も。みんながそれぞれの役割を持って存在していて心を通わせ助け合っているイメージに「世界はなんて優しくて美しいんだろう」という感覚になりました。
講義最後のシェアタイムでは、なぜか急に涙が溢れてきてる自分にも驚きました。泣くと人を困らせてしまう、泣くことは良くないこと、と思っていた私が感情を出せていることに。スコレというコミュニティの場が、どんな自分を出しても安心で安全だとしっかり感じ取れているんだなと客観的に感じた瞬間でもありました。
Sさん/優等生の答えを手放して、パーソナルな感覚で紡ぐ、私だけの世界観
未来をイメージする時、当たり前のように風景が浮かんできたのが面白かったです。あーはいはい、ここね!ずっと昔に行ったことある!くらいのテンションで、実在してるのかな?と思ったほどです。
これが「どんな世界になって欲しい?」と聞かれていたら、優等生的な回答になっていたと思うんです。例えば、戦争のない世界、とか。このワークは、規模は大きいんだけど、パーソナルな感覚でイメージをすすめていく。「自分」という小さな枠組みではなくて、「世界観」という大きな視点で未来を描くことが、こんなにも自分にインスピレーションを与えてくれるなんて思いませんでした。
個人的に良いなと思ったのは「叶うかどうかはどうでもいい」という箇所。今まで未来のビジョンを描くワークをすると、どうしても「目標設定」になっていたんです。どんな仕事をして、どんな服を着て、どれだけお金を稼いでいて……と。そうすると、「自分へ課す幸せの条件」みたいになって、手段と目的の入れ替わりが起きてしまっていました。
毎年夏頃に、自分の生きたい人生をビジョンボードにしているのですが、今年は「自分の生きたい世界観」でビジョンボード作ってみようかな、と思っています。
Mさん/比べず責めずに生きる勇気を選んだあの日
「未来が先にあって、今の自分の状態は過去の経験からコラージュされたものなんだ」という内容が衝撃でした!今回、無意識に思い描いている未来の姿に真正面から向き合って、自分がちゃんと「変わりたい」と思えたこと、そこに向かって意識的に選び直していけることに、希望が持てる講義でした。
描いた未来のなかにいる私は、自分らしく生きながら、みんなの幸福を祈っていました。その「未来の私」が本当に叶うんだとしたら、それは人と比べたり、自分を責めたりすることがなくなって、役に立たない認知を手放せたからなんだと思います。
個別セッションで未来の自分に会う機会があり、未来の私はいまの自分に「大丈夫だよ」と言っていたんです。そういう未来の自分を作っていくためにも、一つひとつの勇気を、積み上げていきたいです。変わらない自分をずっと嫌だと思ってましたが、講義のなかで、人間には「変わらないことを選ぼうとする性質」があると説明を聞いて、少しホッとした思いもありました。
今月のテーマは「まだ見ぬ美しい未来を描いて生きる」。改めて、生きる勇気が湧いてくるテーマだったなと、今振り返って思っています。
あなたはどんな未来を選びますか?
今回の講義で私たちは「自分にとっての“美しい未来”を描くこと」を通して、「何を大切にして生きたいのか」「どんな世界を生きたいのか」という問いに、真剣に向き合いました。
未来は、誰かに決められるものではありません。なんの制約もなく、自由に描いていい。理想を描くことに、正解も失敗もありません。
本当に大切なのは「叶うかどうか」ではなく、心の奥にある、本当の願いに触れること。そのとき、私たちは気づくのです。まだ言葉にならない“願いの輪郭”が、確かに自分の内側にあることを。“本音”で描いた未来は、静かに、でも確実に、人生を確かに動かし始めます。
「あなたは、どんな未来を描いて生きるのか」
自分なりの世界観を見たメンバーさんたちの表情の変化を見て、改めてこの問いの持つ力の大きさを感じる時間でした。
6月をふりかえって—うきより
理想の未来を描くことは、ときに怖さを伴うものです。
「本当にこんなことを願っていいのだろうか」
「叶わなかったらどうしよう」
そんな気持ちが湧くのは、とても自然なことだと思います。でも今回、暮らしのスコレのメンバーのみなさんは、その不安を超えて、心から「こうだったらうれしい」と思える世界に触れてくれました。私もその世界をともに感じたとき、「人はどこまでも優しくて、力強い存在なんだ」と感じ、深く感動を覚えました。
誰かと比べるのではなく、誰かの期待を満たすのでもなく、自分の願いに気づき、それを選び直す。その小さな一歩が、未来をつくっていくんだと思います。そして、その景色を「いいね」「応援してる!」と言い合える仲間がいることが、スコレの何よりの価値だと思っています。
まだ見ぬ美しい未来へ向けて、私たちの人生は、まだはじまったばかりなのかもしれません。
そこへ向かうために、あなたはどんな一歩を踏み出しますか?
文章: うき
編集: Mana Wilson


