「どうせ言ってもムダ……」
そんなふうに、“伝えること”を諦めた経験はありませんか?
家族や友人、職場の人たちとの衝突を避けたり、相手はきっとわかってくれないだろうと言いたいことを飲み込んだり。そうやって本当の気持ちを伝えられない関係の中で、私たちはいつの間にか「ひとりぼっち」になってしまうのかもしれません。
8月の「暮らしのスコレ」のテーマは、「アサーティブ・コミュニケーション」。怒りや不安をこじらせて、相手と対等ではない「タテの関係」に陥ってしまう構造をひも解きながら、自分も相手も大切にする「ヨコの関係」を育てていくための学びの時間となりました。
この回想録は、2025年4月に始まった「暮らしのスコレ」第3期の歩みを、月ごとに振り返る連載です。7月から進めてきた大きなテーマ「他者とつながるの後編」のまとめとなる8月。スコレメンバーたちが向き合ったのは、すぐ隣にいる誰かとすこやかで誠実な関係を育てていく、という日々の実践でした。
あなたにとっての「大切な誰か」を思い浮かべながら、どうぞご覧ください。
「暮らしのスコレ」は、あなたの内なる小さな声に、そっと耳を澄ますプログラムです。講義・瞑想・プライベートセッションなどを通じて、半年間かけて「自分らしい生き方」を丁寧に探求していきます。(詳細はこちらから)
わたしも、あなたも、どちらも大切にする関係へ
8月の講義では、「アサーティブ・コミュニケーション」をテーマに、自分の気持ちを誠実に伝えながら、相手のことも尊重する関わり方を深めていきました。これは、単なる会話術ではなく、私たちの関係性の土台を整える“在り方”そのもの。
「人間関係は勝手に良くなることはない」
良好な関係性は、意識的な選択の積み重ねでしか育たないことを最初にお伝えして、鍵となる「すこやかな関係」について講義を深めていきました。アドラー心理学では「ヨコの関係」と呼ばれ、相手と上下ではなく対等な立場で向き合い、協力しながら関係性を育てていく在り方です。
反対に、私たちが無意識に陥りがちなのが「タテの関係」。上下を意識した競争が前提にあり、「相手より上に立ちたい」「逆に、下に潜り込んで波風を立てたくない」といった行動につながります。これが、知らず知らずのうちに人間関係を支配と依存の構造に変えてしまうのです。
講義では、この「タテの関係」が日常の中でどのように現れているかを、具体的な5つの行動(怒る/褒める/心配する/弱く見せる/へつらう)から紐解いていきました。
たとえば「怒る」という感情には、相手を支配しようとする意図が隠れていること。「褒める」ことも、無意識に相手を評価・コントロールする関係性を生みやすいこと。「心配」は、優しさに見せかけて自分の不安を相手に背負わせてしまう行為であること。そして、「弱く見せる」や「へつらう」といった一見控えめに見える行動も、実は相手との間に上下の力学を生み出す構造があること……。
それぞれの行動を振り返る中で大切にしたのは、「正しい・間違っている」という判断ではなく、「私はどんな目的で、相手とどんな関係をつくりたいのか?」という問いでした。
「怒るかわりに、どう伝える?」
「褒めるかわりに、どう認める?」
「心配の奥にある不安は、誰が引き受ける?」
それらはすべて、「自分と相手、どちらも大切にする関係」を築くための、静かなトレーニング。それぞれが身近な誰かの顔を思い浮かべながら、自分たちの日々の行動を振り返る時間となりました。
ヨコの関係を育てる8つの姿勢
「じゃあ、どうすれば“ヨコの関係”って築けるんだろう?」
その問いへの答えを探るように、後半では、日常で実践できる「8つの姿勢」についてお話ししました。
これらは、特別なスキルや努力が必要なものではありません。けれども、私たちの関係性の土台を「タテからヨコ」へと変えていく、とても本質的な実践です。
まず大切なのは、「自分から尊敬すること」。相手の行動に関係なく、「この人にもきっと意味があって、今ここにいる」という尊敬のまなざしを持つこと。次に、「信頼すること」。たとえ違う意見や価値観を持っていたとしても、「この人は自分の人生を生きていける」と信じる勇気を持つこと。
そこから、「協力する」「共感する」「理性的に問題を解決する」「主張する」「平等である」「寛容である」という6つの姿勢が続きます。
これらは一見当たり前のようですが、私たちの中に深く染み込んだ「タテの関係」によって、実践がむずかしいと感じさせられることもあります。
「自分の意見を伝えたら、嫌われてしまうかもしれない」
「相手のやり方を認めたら、自分が否定されたように感じてしまう」
そうした心の癖や不安と向き合いながら、ほんの少しずつでも、自分の在り方を選び直していく。それこそが、すこやかな関係を育てる第一歩です。
そして大事なのは、これを「全員に対して」完璧にやろうとしないこと。
まずは、「この人と丁寧に関係を築きたい」と思う相手とのあいだで、1つでも、1回でも実践してみること。あなた自身が、仲間を敵にせず、自分を犠牲にもせず、すこやかな関係を選びとっていくこと。
そうして暮らしの中に静かに根づいていく「関係性のアップデート」こそが、私たちの人生にもっとも深い変化をもたらしてくれるのです。
スコレのみなさんの声
「暮らしのスコレ」の大きな特徴のひとつに「シェアタイム」があります。講義や瞑想のなかでも自分の感情を言葉にし、日々の変化もSlack上で振り返ってシェアしていきます。
じっくりと時間をかけながら、ともに学ぶメンバーの言葉に耳を傾け、自身のことも考えていくシェアタイムは、「ひとりじゃない」と思わせてくれる時間。ここでは、そのような振り返りの中から数名の声をご紹介します。
Nさん/これまでの価値観を変えて、娘を信じられる自分へ。
講義のなかで出てきた「タテの関係は、いつも破滅的である」という言葉が強く印象に残っています。そんなタテの関係を、これまで無意識に、なんとも巧みに築き続けてきたことにも愕然としました。どの項目を聞いても自分に思い当たる節があり、「これからだなぁ」と。一貫して、「私はどうしたいのか?」という本当の目的にアクセスできずに不器用なやり方になってしまっている結果なのかなとも感じました。
話を聞きながら、特に娘との関係が真っ先に浮かびました。もともと親という立場上、タテの関係はおかしいものではないと思っていた私の認知がありましたし、娘に怒ったり、心配したりすることが多かったんです。自分の感情や不安を背負わせたり、行動を狭めることをしないようにしたいなと思いました。特に、娘自身をしっかり観察して理解しようとする姿勢、主体性を信じることから始めようと思います。まずは自分から!というのは徹底したいです。
コミュニケーションがスキルや手段ではなく、日々の土台づくりだというのも深く頷けました。土台作りをいかに軽んじていたか……にも気付かされました。コミュニケーションは、上手下手ではなく日々の努力。今回の講義は、自分の常識が覆ることもあったので時間はかかってしまうだろうけど、ひとつひとつ取り組めるところから意識していきたいです。
Aさん/「自分はどう在りたいのか」を考え続けた先で、よい関係が築けたら。
今回の学びを、パートナーとの関係に活かしていきたいと思いながら聞いていました。子どもや同僚とはうまくやれても、パートナーシップでは「相手に嫌われるんじゃないか」という思いが邪魔をしてきて、うまくコミュニケーションが取れないこともありました。
今回の講義を聞き、とにかく自分の素直な気持ちを相手に伝えることを意識しました。そして、まずは彼という人間を受け入れて信頼すること。これは今も私にとって挑戦でしたが、少しずつできるようになってきています。
例えば、相手が仕事で頭がいっぱいな状況のとき、以前の私であれば「連絡ぐらいできるはず」と怒りをぶつけたり、相手を変えようとしたりしていました。今回は、彼が「終わったら報告するね」と言っているのだから、それを信じてみよう、と。そうして待ってみると、約束通り会議が終わったと報告があり、彼自身も開放感に満ち溢れているのが感じられました。彼が私に向けている誠実な部分を見て、信じてみよう。今はそう感じています。
私自身、これからまだ浮き沈みはあると思いますし、他者に影響を受ける事もたくさんあると思います。「自分が本当はどうしたいのか、どうありたいのか」を考え続けることは、私の永遠の課題かもしれません。それでも、少しずつ見えてきている自分のありたい姿にもっともっとフォーカスしていけたら、周りの人とも自然に接することができるんじゃないか。そんな事を考えながら過ごした8月でした。
Rさん/他人との健やかな関係のために向き合いたい“自分との関係”。
講義を受けながら、実は段々と落ち込んでいました(笑)。私はまだまだ「へつらう」をしてしまってるなぁって。自己受容できずに、人の評価に一喜一憂。褒められないと価値を感じられない。そういう自分が嫌で変わりたくて、自分の本音に正直に生きることを意識してきました。でもまだまだ認められたい気持ちがいっぱいあるんだなぁって。
特に最近は、本当に伝えなければいけないことが伝えられなかったり、荒波がたたないように立ち回ったりすることが続いていました。例えば、職場で愚痴の聞き役になり、「そんなに不満なら直接言えばいいのに……」と思いながらも、いい顔して聞いてしまう自分がいたり。
でも、ここで気づけてよかった!
相手との良い関係を築くには日々の努力が必要なように、“自分との関係”も同じ。シェアタイムでメンバーのひとりがそうおっしゃってるのを聞いて、まずは私との良い関係を築くために、モヤモヤや違和感を見過ごさないことを自分と約束したいなと思いました。
8月を振り返って(うきより)——
8月は、「わたしを大切にしながら、あなたのことも大切にする」という関係性の在り方を、とことん丁寧に考えた1ヶ月でした。
講義では、「怒る・褒める・心配する・弱さを武器にする・へつらう」など、日常でつい無意識にやってしまっている“タテの関係”の行動をひとつひとつ見つめ直しながら、それを“ヨコの関係”へと変えていくための8つの姿勢を、みんなで一緒に学んでいきました。
関係性の質は、人生の質そのもの。
だからこそ、この問いに誠実でありたい。
「わたしは、誰と、どんな関係を育てていきたいのか?」
人との関係は、急に変わるものではありません。
コツコツと、日々の暮らしの中で育てていくもの。
すこやかな関係を、これからも一緒に紡いでいきましょう。
「暮らしのスコレ」は、あなたの小さな声に耳をすます、”ほんとうの願い”とつながるための場所です。講義や瞑想、プライベートセッションなどを通じて、自分らしい生き方を一緒に探求していきます。(3期までのプログラムの詳細はこちらをご覧ください。)
次回(第4期)は2027年1月にスタートを予定。スコレにご興味のある方への無料カウンセリングが人数限定でスタートしております。公式LINE からお問い合わせください。

文章: うき
編集: Mana Wilson


